≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 株式相場(日経平均)はファンダメンタルズ(基準相場)に戻り安定状態へ -
下の図は前回の講座、「波乱相場には統計的処理で適正な評価と対応を」でご紹介した日経平均と基準相場、および両者のかい離率の2020年初からの日次ベースの推移を直近の9月9日まで延長したグラフです。
日経平均と基準相場、およびかい離率の推移(日次ベース)
ー2020年1月6日~2024年9月9日―
この間の基準相場は基本的に堅調な上昇基調を辿る一方、株式相場はコロナ・ショックによる急落とその後の急上昇を経た後、ロシアのウクライナ侵攻などで弱含み状態が続く荒い動きを見せています。しかし、2023年7月以降、基準相場に追いつきしばらくは基準相場に沿った安定期となりました。
それが2024年初から相場は動意づき上げ基調を強めて7月には日経平均が高値をつけました。相場は直後に下落に転じ、8月5日には日経平均が4,000円を超す急落となりましたが、直後に反発しており、その後日経平均はやや荒っぽい上下を繰り返しつつ、基準相場に回帰する様子がうかがえます。
下図は日経平均、基準相場と両者のかい離率を20204年初から9月9日までを対象にすることで、こうした近時の動きを拡大したグラフです。
日経平均と基準相場、およびかい離率の推移(日次ベース)
―2024年1月4日~2024年9月9日―
本年初からの基準相場(ファンダメンタルズ)は緩やかに推移しているのに対し、日経平均(株式相場)は年初から一貫して基準相場を上回り、7月11日に高値の4万2,224円を付けた後、調整局面に入り8月5日の急落で調整のあく抜けをした形で日経平均は基準相場に向かって急回復しています。
直近の9月9日の日経平均は3万6,215円と基準相場の3万6,209円との差は6円、かい離率は0.02%となり、株式相場はひとまずファンダメンタルズに戻った形です。
年初からの相場は高値を目指した登山が一応目的を達して下山途中で足を滑らせ転倒したものの滑落して大事故になることなく立ち直り無事平地に戻ったかのようです。
こうした、年初からのファンダメンタルズとはほとんど関係のない動きを続けた相場は、投資家の市場リスクに対する評価の変動によってもたらされていると見ることができます。
このような相場変動の裏にある市場リスクの動きを示すのが「リスク回避指数」(*)です。下図は年初から直近の9月9日までの同指数の推移を示すグラフです。
(*)「リスク回避指数」は50点であれば市場のリスクが高くも低くもないちょうど中立の状態、70点以上であれば投資家が株式市場から逃げ出すほど市場リスクが高い状態、30点以下であれば投資家がより高くてもよいと考え株式市場にこぞって参入するほど市場リスクが低い状態を表します。詳しくは前回講座をご参照ください。
「リスク回避指数」の推移(日次ベース)
―2024年1月4日~2024年9月9日―
指数は年初に52点台と中立状態をやや上回った水準から一貫して下げており、投資家は年初から3月半ばまで相場を楽観し続けてきたことが分かります。
指数は2月半ばから4月半ばにかけて楽観模様が続き通常リスクの範囲を下回ってきましたが異変相場と言える30点以下の相場の過熱状態であるリスクオンには至らず、4月半ば以降は通常リスクの範囲で推移し相場は安定的な状態に入ったことが分かります。
その後、7月11日の高値を付けた時は37点台と通常リスクの範囲を下回り相場はやや高値に先走った感はありますが、依然異変相場であるリスクオンには距離があり実は相場に過熱感はありませんでした。
そこから市場リスクは通常リスクに戻ったあと、指数は8月5日に1日で13ポイント跳ね上がる異例の事態で66点台と、一気に相場下げ過ぎの異変相場であるリスクオフに近づき、市場リスク急騰(相場急落)のショックはやはり大きいものでした。
ただ、基本的に相場が通常リスクの範囲内での変動に収まる傾向は続いているようで、相場は正常化への復帰が早く直近の指数は50.70とほぼ中立状態に戻っています。
今後とも一時的な波乱はあると思われますが相場は安定状態、すなわちファンダメンタルズに見合う水準を基本的に推移していくものと思われます。その意味で、ファンダメンタルズの中核である業績と為替相場の先行きが今後の相場の動きに直結すると見ることができます。
*当講座についてのご意見、ご質問等ございましたら以下までご一報いただければ幸いです。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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IIS
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