≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 通常の変動範囲に戻った日経平均:今期の業績(ファンダメンタルズ)に注目! -
株式相場は年初からの荒れ模様が続いている中、中東情勢の影響もあり、日経平均は4月19日に1,000円を超える急落を見せました。前回の当講座で述べた荒海の中での大揺れとなった形です。
こうした不安定な相場情勢の中で正しい位置感覚を見失う“船酔い”をしないためには、荒れる海にそのまま身をまかせるのではなく安定したしっかりとした基準を見据えることです。すなわち、相場形成の根っこにあるファンダメンタルズに注目することです。
下の図は日経平均と日経平均のファンダメンタルズに基づく水準を表す「基準相場」の推移を示すグラフです(前回講座でのグラフを4月19日まで延長しています)。
日経平均と「基準相場」の推移(日次ベース)
―2023年12月29日~2024年4月19日―
紺色の線が日経平均、赤線が「基準相場」です。
図から日経平均は3月22日に付けた高値の4万888円から直近の3万7,068円まで一月足らずの間に3,820円、9.3%の大幅な下げとなりましたが、その結果、一時は上げ過ぎ(リスクオン)状態に迫った相場が一気に通常の変動範囲にまで戻ることになりました。
下図はこうした状況を具体的に示すグラフです。日経平均と「基準相場」に併せて通常の変動範囲とげ過ぎの境界となる変動の上限を示したグラフです。
日経平均と「基準相場」及び通常変動の上側・下側と変動上限の推移(日次ベース)
―2023年12月29日~2024年4月19日―
紺色の線が日経平均、濃い赤線が基準相場、緑線が通常変動の上側と下側、そして最も上にある薄い赤線が変動の上限を示します。それぞれの指標銘の枠内はそれぞれの4月19日の値です。
日経平均は高値を付けた3月22日には変動の上限まであと1,700円余りまで近づいた直後に下落に転じ、4月19日の急落で通常変動の上側である3万8,176円を下回り安定変動領域と言える範囲に入ってきました。
年初からの相場波乱の局面が、やや荒っぽく真っ当な相場形成の状況に戻ったと言えます。
さて、と言うことは相場がファンダメンタルズに沿った動き、その中核要因である企業業績の動向に従う傾向が強まることになります。
ここで、これまでの業績と相場の関係を見てみましょう。下図は2002年5月から2024年4月までの日経平均と業績、その代表的指標である予想1株当たり利益(以下、予想EPS)の推移を月次終値ベース示したグラフです(2024年4月は19日終値)。
日経平均と予想1株あたり利益(予想EPS)の推移(月次終値ベース)
―2002年5月~2024年4月(2024年4月は19日終値)―
紺色の線が日経平均、赤線が予想EPSです。
この22年間の動きを見て分かるように両者はよく連動しています。ちなみにこの間の相関度を示す相関係数(1であれば完全に一致して変動することを、ゼロであれば全く連動しないことを示す指標)は0.934で十分高いものなります。
また、図からリーマン・ショックとコロナ・ショックといった世界的な経済大波乱で相場も大きく変動しますが、日経平均は予想EPSの動きを先取りして動いている点にご注目ください。相場の経済に対する先行性が明らかにされた形です。
この意味でこれから本格化する前期の決算発表と併せて示される今期の業績予想の如何が大いに注目されます。順調な増益予想か、厳しい見通しにとなるかでそれなりの相場に進むと思われます。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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