近時の株式相場は荒い変動が目立ちます。
下の図は今年初から直近の10月20日までの日経平均と株式相場のファンダメンタルズに対応する「基準相場」(「市場価値基準相場(日経平均ベース)」の略称:詳しい内容についてはこちらをごらんください)の推移を日次ベースで示したグラフです。
日経平均と基準相場の推移(日次終値)
―2023年1月4日~2023年10月20日―
紺色の線が日経平均、赤線が基準相場で、それぞれの期初と直近の値およびこの間の上昇幅を日経平均は空色、基準相場は薄赤色の枠で示しています。また、相場の節目である日経平均のピークと底値を緑色の枠で記しています。
日経平均は年初から力強い上昇を見せ7月3日には33年ぶりの高値となる3万3,753円を記録しました。その後9月半ばまで高値圏で推移し、14日には3万3,533円と最高値に迫る2番高値を付けましたが直後から相場は不安定化し、10月4日には2番高値から3,000円の下げとなる底値、3万526円まで下げました。その後、日経平均がしばしば前日比で500円を超える変動があるなど不安定な相場状況が続いています。
半面で基準相場は年初から緩やかな上昇を続けており、一方で上述のように大きな変動を繰り返す日経平均とのかい離、すなわち、相場の基本的条件と実際の相場との齟齬が目立ちます。
今回はこうした不都合な状況の背景を「リスク回避指数」(*)で解明します。
(*)「リスク回避指数」について詳しくはこちらをご参照ください。
下図は年初から10月20日までの「リスク回避指数」の推移を日次ベースで示したグラフです。
「リスク回避指数」の推移(日次終値)
―2023年1月4日~2023年10月20日―
グラフ中央の黒線が中立の市場リスクを示す50点、その上下の緑線は通常のリスク変動の範囲で、相場が安定状態であることを示す40点と60点、薄赤色の線は市場リスクが非常に高く投資家が株式を敬遠する結果相場が下げ過ぎとなる「リスクオフ」の境界となる70点を示します。
図から、今年初から直近までの相場の変遷は以下の3つのフェーズに分けることができます。
●フェーズ1
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって一時相場がリスクオフ状態になった後、市場が正常化に向かう中、中立リスクに至るまでの2023年初からの回復道程。
●フェーズ2
リスクが中立の状況に達した後の、しばし続いた相場の安定局面。
●フェーズ3
リスクがリスクオフの前段階となるリスクオフ予備領域に接近しつつある状況。近時の波乱模様相場の背景となっている。
*ロシアによるウクライナ侵攻の先行き不透明感に加えてパレスチナのガザ地区の問題が中東情勢全般の不安定化への拡大が懸念される中、相場の不透明感は強まっています。ただ、足許の市場リスク自体は57点台と警戒領域である「リスクオフ予備領域」に極めて近接してはいるものの、現時点では市場リスクは通常リスクの範囲にあることで、静観を維持することが選択の中心になると言えそうです。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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IIS
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