≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 正当な水準(ファンダメンタルズ)に到達して一服、次の展開に身構える株式相場 -
ファンダメンタルズに追いついた株式相場
株式相場は昨年2月のロシアのウクライナ侵攻から続いた低迷状態から脱し今年初から上昇に転じました。6月には日経平均は3万3,000円台をつけ年初からの上昇幅は約8,000円、30%の上昇です。この上昇ペースはさすがに速過ぎということで、足元では調整模様の一進一退の動きとなっています。
この上昇のペースはともかく、足元の相場水準自体は不自然なものではありません。現在の水準は本来のあるべき水準に対するこれまでの下げ過ぎが是正されたものと言うことができます。以下の図をご覧ください。
図は日経平均とファンダメンタルズの水準を表す「理論株価」について今年初から直近の7月7日まで日次ベースで示したグラフです(前回講座では2022年初からの推移を見ましたが、今回はより近時の動きをきめ細かく見るため今年初からの動きに絞っています)。
日経平均と理論株価の推移(日次終値)
―2023年1月4日~2023年7月7日―
紺色の線が日経平均、赤線が理論株価です。
年初に5,200円余りあった日経平均と理論株価の差はその後の日経平均の急騰で6月13日に追いつき、以降は理論株価を挟んだ上下動を続けています。株式相場は本来の正当な水準に戻って一段落したと見ることができそうです。
ファンダメンタルズから先行き相場を占うと・・・
以下の図は日経平均と理論株価(株式相場とファンダメンタルズ)のかい離の推移を示したグラフです。
日経平均と理論株価のかい離(理論株価―日経平均)の推移(日次終値)
―2023年1月4日~2023年7月7日―
6月13日にかい離ゼロに到達してからの動きはゼロを挟んでプラス・マイナスがほぼ同じレベル(プラス620円とマイナス807円)の範囲で振れており、あたかもこれまでの不都合な状況を解消させてとりあえず一服しつつ、息をひそめて次の体制をとるための力を蓄えているように見えます。
では、次に株式相場が本格的に動くきっかけは何でしょうか。それは現状がファンダメンタルズに沿った動きを続けている以上、イチにファンダメンタルズの動向にかかっていると見るべきでしょう。
ここで、「理論株価」にファンダメンタルズを決める主要要素を求めると、企業業績と為替の動向になります。
このうち業績については現在すでに過去最高水準にありますが、緩やかなインフレを背景とした企業の製品価格の上昇と賃金の上昇等で経済に活気がよみがえることによる業績のさらなる改善傾向が窺われ、これはファンダメンタルズを改善させます。
一方、為替については現在の円水準は歴史的な傾向からは安いレベルにあると言え、ここからは円安よりむしろ円高方向への引力の方が強そうです。これはファンダメンタルズを引き下げる要因となります。
ただ、ファンダメンタルズに対する影響度は業績の方が強いことから、トータルとしてファンダメンタルズは改善する見方が有力となりそうです。株式相場は目先の変動はあるとしても先行きの傾向としては底堅さから上昇を目指す姿が浮かんできます。いかがでしょうか。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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