ポートフォリオ戦略実践講座:「シナリオ分析で現下の相場評価の適正さを計る」を公開しました。  (2021/03/23公開)

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<応用編・講座>
「ポートフォリオ戦略実践講座」
で新講座を公開しました。

ー シナリオ分析で現下の相場評価の適正さを計る -

 株式相場は高値圏にありますが、日経平均が節目の3万円を超えたところで急落、急騰が続き不安定な動きが目立ちます。
 相場を足元のファンダメンタルズとの見合いで測ると、相場水準は上振れしていることは否めず、バブル状態にあるのではとの声もあります。しかし、一方で株価は半年から9カ月程度先の経済状況を折り込んで動くとされており、この見方に立てば市場は来期の業績を見込んで相場をつけていることになります。
 そこで、今回は来期の業績によってファンダメンタルズに見合う相場水準がどのようなものなのか、シナリオ分析によって探ってみました。

 まず、現在の相場の状況とファンダメンタルズの関係を、日経平均と、業績と為替市場の動向をファンダメンタルズ要因とする「理論株価」、および新たにストックの要素として純資産を加えた「基準相場」との対比で見ます。
 理論株価についてはこちらのコラムを、基準相場について詳しくは月23日付けの本講座をご参照ください。

 理論株価と基準相場の決定式は以下の通りです。

理論株価=―3、832+70.78*【予想EPS】+106.67*【米ドルレート】
基準相場=―7,068+32.93*【予想EPS】+128.86*【米ドルレート】+3.855*【純資産】

 下図は、日経平均、理論株価と基準相場について、2002年5月から直近の2021年3月までの月末値の推移を示すグラフです。2021年3月は19日終値です。

              日経平均、理論株価と基準相場の月末値の推移
                ―2002年5月~2021年3月(19日)―

   


 紺色の線が日経平均、赤線が理論株価、緑線が基準相場です。この期間で生じた相場波乱リーマン・ショック、BREXIT、そして今回のコロナ・ショックの3回です。それぞれについて発生時を枠内で示しています。また、直近の3月19日の各指標の値を枠内で記しています。

 これら3つの相場波乱をファンダメンタルズとの関連で記すと、リーマン・ショックとコロナ・ショックは、どちらもショック後に相場は回復に転じたのに対してファンダメンタルズが低迷を続けたことによって両者の間にかい離が長期に渡って生じるという類似性があります(各相場に対する詳しい記述は本講座をご参照ください)。

 この類似性を敷衍すると、今回のコロナ・ショックにおいて、翌期の業績が好転することでファンダメンタルズが上向いて相場に追いつく形でかい離が解消する姿が見えてきます。
 こうしたケースを念頭に、来期の業績に相当する予想EPSについて、現状を起点として30%、50%、60%の各増益となった場合の理論株価と基準相場の値をまとめたのが以下のグラフです。
 為替については、近時の安定的な状況から、ここでは1ドル=109円で固定しました。BPSについては予想EPSが高まればそれにつれて内部留保の蓄積としてのBPSも高まりますので、これまでの両者の関係を基に予想EPSの増加に合わせて設定しました。
 横軸に30%、50%、60%の各増益のケースを取り、紺色の線が日経平均、赤線が理論株価、緑線が基準相場を示します。

      予想EPSの想定シナリオに対する理論株価と基準相場のグラフ
   

 30%の増益の場合、予想EPSは205円、それに見合うBPSは3239円となり、この水準に対応する理論株価は2万2305円、基準相場は2万6216円となります。現在の日経平均とはまだ大分差があります。
 現在の日経平均の水準に近いのは60%増益の基準相場2万9812円です。ただ、大幅増益に転換するとして、可能性としては50%増益ケースの方が高そうです、その場合は基準相場で2万8664円となります。
 2022年3月期の業績予想がこうした結果になれば、足元の市場の相場形成は適正に機能していたことになります。5月の来期の予想業績の発表が待たれます。

*各ケースの実数値を含む詳しい内容は本講座をご覧下さい。

*ご注意:本講座は会員向けの「応用編・講座」に収録されます。ご覧になるためには会員登録が必要となりますが、会員登録した当月中は無料で全ての情報、機能をご利用いただけます。お気軽にお試しください。(退会の手続きはトップページの「退会手続き」の窓から行えます)。

講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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IIS
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