≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー ァンダメンタルズの掌の上で踊る株式相場 -
「相場というのは変動常なく捉えどころがないものだ。だから、畢竟株式投資の勝負は勘と度胸で決まるのだ!」という見方もあるようですが、これは確かに一面、すなわち目先の投資の勝ち負けについてはある程度正しい面もあると言えるかもしれません。
しかし、個人の場合、投資で目指すのは長期で見た資産の堅実な成長ではないでしょうか。そこで投資の視点を長期に切り替えると目先の“勝った負けた”の繰り返しではない株式投資の依るべき基礎地盤が見えてきます。それは、「株式相場を形成する原点はファンダメンタルズ」というシンプルな原理です。
下の図をご覧ください。株式相場を代表する指標として取り上げた日経平均と日経平均を形成するファンダメンタルズを示す「理論株価」(*)について、2020年初から直近の2023年7月14日まで日次ベースで示したグラフです。
(*)「理論株価」:①日経平均ベースの予想1株当たり利益、②米ドルレート、③日経平均ベースの1株当たり純資産ーーの3つの要素で構成。詳しくはこちらをご参照ください。
日経平均と「理論株価」の推移(日次終値)
―2020年1月6日~2023年7月14日―
紺色の線が日経平均、赤線が理論株価です。この間はコロナ・パンデミックによるグローバル経済の行き詰まりや、ロシアのウクライナ侵攻による資源・食料価格高騰を引き金とした世界的インフレの高進さらには世界秩序の崩壊も、という懸念で歴史的にも波乱要素が満載の期間だったと言えます。図ではこの間の相場のポイントとなる時期と日経平均の値を記しています。
日経平均は2020年初の2万3,500円台からコロナ・ショックによって1万6,500円台まで急落、そこから急回復し一時3万円台をつけたものの、その後調整局面に入り、そこにロシアのウクライナ侵攻という追い打ちが勃発、低迷が深まりました。それが、2023年から突如上昇に転じ6月には最高値3万3,706円を付けています。
こうした日経平均の荒っぽい変動に対して理論株価は緩やかに上昇基調を辿った結果、いくつかの時点で両者の間に極端な格差が生じています。
下図はこの株式相場とファンダメンタルズのかい離(理論株価―日経平均)の推移を示すグラフです。
かい離(理論株価―日経平均)の推移(日次終値)
―2020年1月6日~2023年7月14日―
日経平均が理論株価を最も下回った(かい離がプラス)のは2020年3月のコロナ・ショックの急落時と、ロシアのウクライナ侵攻によって相場低迷が続く中で為替市場における円の急落を主因に理論株価が最高値を付けた2022年10月に記録した6,500円強です。
逆に日経平均が理論株価を最も上回った(かい離がマイナス)のは2022年10月に日経平均が最初のピークを付けた時で、この時の差が6,575円となっています(2番目のピーク時は理論株価が日経平均の上昇を後追いする形(株価の先行性)で上昇しており格差は縮小しています)。
ここで、理論株価と日経平均のかい離がプラス、マイナスの両面でどちらも最大が6,500円程度という点が注目されます。すなわち、相場とファンダメンタルズのかい離は6,500円程度が限界であることを示唆していると見ることもできそうです。そうであれば今後、相場が波乱局面に入った時、理論株価の水準を押さえておくことで、そこからプラスあるいはマイナス6,500円程度が日経平均の高値および底値のメドになることになりますから・・・。
そしてもうひとつ興味深い点は、期初の2020年初のかい離がマイナス26円、直近の2023年7月14日のかい離がマイナス31円と、日経平均と理論株価がほぼ一致しているという現実です。
2020年以降のコロナ・ショック、そしてもはや現代の世界ではありえないと思われていた強国による他国への侵略という最大級の相場かく乱要因が続いたのにもかかわらず、それぞれ最悪のケースからは免れそうな状況になったところで相場は波乱以前のファンダメンタルズに一致したという事実です。
これは、あたかも相場はいくら荒っぽい変動をしても(相場自体の根幹が決定的に破壊されない限り)結局はファンダメンタルズという、いわばお釈迦様の手のひらの中で暴れているにすぎないことを示しているように見えます。いかがでしょうか。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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