<『応用編・講座』>
「応用編・講座」の「国際投資環境の視点から」で新講座を公開しました。
ー 中国の不動産バブルと鉄鋼生産 -
戦後の世界の粗鋼生産は1974年の7.47億トンがピークで、1995年まで20年間この水準を超えることはなかった。ひとたび突破すると急拡大し2020年には18.64億トンに達した。
主役は中国。1995年には0.5億トンに満たなかった中国の粗鋼生産は2020年には世界全体の6割近い10.53億トンに達した。歴史上比類ない拡大だが、効率は別だ。中国の鉄鋼消費弾性値(鉄鋼消費成長率/GDP成長率)は日本の4倍と極めて高い。
同じ数の自動車を走らせるにしても、性能の良い軽量車を走らせるのと自重過多の昔のソ連車を走らせるのを比べてみれば明らかなように、鉄鋼の消費弾性値は経済効率のメルクマールとして今なお有効だ。
米国が作り上げたインフラや建造物は巨大である。道路、鉄道、橋、港湾、飛行場、石油ガスパイプライン、自動車産業、軍事施設、戦艦、宇宙産業など、鋼材消費の蓄積ともいえるアメリカの工業・社会インフラは断トツで世界最大である。
中国はこれほど大量の鉄鋼を生産し消費してきたのに、まだアメリカに追いつけない。何処に鉄鋼製品やセメントを使ってきたのか。
中国恒大の行き詰まりは鋼材の無駄遣いを象徴する。中国全土で百万戸単位で存在するといわれる躯体工事が完工しても内装、電気、水道など最終仕上げが未完の大規模マンション群、ゴーストタウン「鬼城」、は大量の鉄を飲み込んだはずだ。鬼城にとどまらず、値上がり期待で購入されている完工済の上海など大都市部の投資用マンションも空室が極めて多い。
鬼城は人口3-5百万の中規模都市に多く、空室率の高い投資物件は大都市に集中している。もちろん、稼働率の低い不動産にも大量の鉄鋼製品とセメントが使われている。
土地の私有ができない中国では開発プロジェクトはお上から土地の長期リースを受ける必要があり、このリース料がお上の収入、地方財政の基盤、となってきた。あらゆる開発には土地が必要で、リース物件の確保と建設がイタチごっこで繰り返され、開発業者、役人、党員が懐を暖めてきたことはよく知られている。
国有地が無から有を生み、安い建設費で住宅を建設し、街全体を売るコンセプトで値段をつり上げるという流れは、投資資金が流れ込む限りは好循環だった。しかし、只今は、沿海部大都市部の優良開発用地が消滅し実需がおぼつかない地方都市に移り、ディベロッパーは少なくなった開発用地確保に走り、実需を上回る用地を確保し、そこに建った物件が鬼城化し始めている。逆回転の始まりだ。
中国のバブルは、生産拡大、消費拡大、住宅投資拡大という高度成長の中で、内需構成要素拡大が相乗して膨らんだ結果だ。
中国はどうするのか。市場の手に委ねて一挙に解決するというハードランディングシナリオは採れない。市場の動向によってstopとgoを調整する以外にない。それは透明性から不透明へ逆回転となる。
中国のバブルは生産、消費、住宅投資の拡大という実体経済の成長の中で発生した以上、バブルの処理は実体経済、特に生産に大きな影響を及ぼす。不動産バブルと過剰生産力の双子の調整が同時進行することになる。負の相乗が働く。
結論は、誰がこのバブル崩壊のコストを支払うのか、に尽きる。政治的影響の最も少ない者たちが負担を強いられるのは、何処の国も同じなのかもしれない。
*当コメントは本講座の抄訳です。日本のバブルとの比較も含めた詳細な内容は本講座をご覧下さい。
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講師:真殿達
国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長、審議役等を経て麗澤大学教授。米国のベクテル社、ディロン・リードのコンサルタント、東京電力顧問。国際コンサルティンググループ(株)アイジックを主催。資源開発を中心に海外プロジェクト問題への造詣深い。海外投資、国際政治、カントリーリスク問題に詳しい。
抄訳担当:日暮昭
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