<応用編・講座>
「ポートフォリオ戦略実践講座」で新講座を公開しました。
ー 業績とかい離する株式相場に新しい評価指標、「基準相場」を用意 -
業績を主要因とするファンダメンタルズが新型コロナウイルスの世界的な流行によって大幅に悪化する一方で株式相場は底堅く推移した結果、足元で株式相場はファンダメンタルズと大幅に上方かい離しています。
下の図は株式相場を示す日経平均とファンダメンタルズを表す理論株価の推移を今年初から直近の9月18日まで示したグラフです。併せて理論株価の構成要素である業績と為替市場を示す日経平均ベースの予想1株当たり利益(予想EPS)と米ドルレートの推移を示しています。
日経平均、理論株価と予想EPS,米ドルレートの推移(日次終値)
―2020年1月6日~2020年9月18日―
日経平均と理論株価が左目盛、予想EPSと米ドルレートは右目盛です。各指標名の枠内の値は直近の9月18日の値です。
理論株価が4月半ばから急低下しているのは米ドルが安定している一方で予想EPSが今期の予想を折り込むことで一気に低下したことで一蓮托生で道連れにされたためです。
株式相場がこのようにファンダメンタルズの急変にも関わらず堅調に推移した裏にはファンダメンタルズと異なる強い相場を維持する要因、すなわち企業の本質的な資産価値を示す純資産(自己資本)の厚さがあったと考えられます。事実、日経平均ベースの1株当たり純資産(BPS、Book-value Per Share)はこの間に概ね堅調に上昇過程を辿っています。
現在、理論株価は日経平均ベースの予想EPSと米ドルレートによって以下の決定式で決められています。
<現行の理論株価決定式>
理論株価=-3,832+70.78*【予想EPS】+106.67*【米ドルレート】
*具体的な理論株価の推計の詳細についてはこちらをご覧ください。
ここで、上記の株式相場と純資産の状況を鑑みて、ファンダメンタルズのみで相場を説明する現行の理論株価に純資産を加えることで相場の急変時により妥当な相場感を表す指標を考えます。こうして得られる相場水準を市場が実践的に評価する相場ということで「基準相場」と呼ぶこととします。決定式は以下の通りです。
<「基準相場」の決定式>
基準相場=-8,699+15.44*【予想EPS】+155.70*【米ドルレート】+4.466*【BPS】
下図は日経平均と理論株価および上で求めた「基準相場」の推計期間における動きを示したグラフです。
日経平均、理論株価と「基準相場」の推移(月次終値)
―2009年5月~2020年9月(18日終値)―
紺色の線が日経平均、青線が理論株価、赤線が基準相場です。指標名の後ろの数値は直近の9月18日の値です。
理論株価が日経平均と大きくかい離しているのは2009年5月以降と直近の2020年5月以降で、リーマン・ショックと今回のコロナ禍の時期です。これらの時期においては株式相場がファンダメンタルズでは説明しきれない特異な状況にあったことが分かります。
そして、これらの時期において「基準相場」は日経平均の動きをよく追っています。基準相場はこうした極端な相場変動時においては市場が拠り所にするのにふさわしい相場水準を示すと言えそうです。
ところで、直近時の理論株価は1万6千円台で日経平均とのかい離が7,000円余りであるのに対して「基準相場」は2万1千円台で日経平均とのかい離は2,000円余りとなっています。
「基準相場」との対比で見ると、日経平均はファンダメンタルズのみに基づく評価より割高感は大幅に薄れるものの、下支えとなるべき企業の実質的な資産価値を考慮してもまだ2,000円余り上回っています。現下の株式相場はやはり割高の状況にあると見ることが出来そうです。
詳しい内容は本講座をご覧下さい。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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